日本農業労災学会賞の紹介

第4回日本農業労災学会賞の表彰

会員から推薦された学会賞候補者に対し、学会賞等選考委員会の慎重な審議と理事会の承認を経て以下のように、本学会で第4回目の学会賞受賞者が決定しました。
おめでとうございます。

2024年10月25日(金)にハイブリッドで開催された第4回学会賞表彰式において、受賞者に学会賞が授与され、受賞者からスピーチをいただきました。

●実践賞(団体の部)
茨城県農業協同組合中央会(代表理事会長 八木岡 努)

【表彰理由】 JA茨城中央会では、2011年4月に茨城県内JA初の労働保険事務組合である「茨城県農協労働保険事務組合」を設置し、中小事業主等の特別加入と一般労災の対応を開始した。

JA茨城県グループでは、「記帳代行」と組み合わせた青色申告決算書・確定申告書の作成支援など総合的な経営管理支援を行い、2024年度は約1,400名の農家を対象に実施し、こうした農家を含めて農業労災補償等に関する労働保険事務を支援してきた。

JA茨城県中央会では関係機関と協力し、JAの労災・営農担当者の人材育成に継続的に取り組み、
①農業労災保険の概要(社会保険労務士)、
②熱中症等の農作業安全対策(茨城県)、
③農作業事故防止対策(全農いばらき)、
④農作業安全と農業リスク診断(JA共済連茨城)等をテーマとした研修を開催している。
また、特別加入組合を設置しているJAの実務担当者向けに、農業労災保険の年度更新手続きや給付手続に関する研修会を開催し、JAにおける労働保険事務の円滑化を実現した。

JA茨城県中央会が2013年に設立した「協同組合エコ・リード」は、2019年に技能実習3号を扱う一般監理事業の許可を得ている監理団体となり、県下JAの監理団体を補完し県内全域を対象に農家への外国人材(技能実習生・特定技能)の受入れ事業を実施している。
また、協同組合エコ・リードは、労働保険の事務処理を「茨城県農協労働保険事務組合」に委託する際に取次ぎをしており、労災保険では2024年現在55事業場・労働者数196人(うち外国人179人)、雇用保険では10事業場・78人(うち外国人72人)の加入に繋がっている。

エコ・リードでは傷病受診に際しての公的健康保険適用外の自己負担部分を補填するために、外国人材(技能実習生・特定技能)には入国時点からJITCO保険(公益財団法人国際人材協力機構が扱う総合保険)への加入を勧め、請求手続きを支援し、外国人材が安心して農業実習や農作業に従事できるように努めている。

このような外国人材が安心して農業実習や農作業に従事する仕組みづくりを、県域を越えて駐在所を設置するなど農協間協同の精神を大切に取り組んでいる。
 
 
●実践賞(個人の部)
鈴木 泰子(社会保険労務士法人リライアンス 代表社員)

【表彰理由】 鈴木氏は、女性活躍事業、障害者や外国人雇用、農業の働き方改革、農業労働力確保支援事業といった、多様な人材が農業で活躍できる取り組みについても、国や自治体などの委員として関わり、併せて“農業労働者の安全確保、健康保持といった視点”で働きがいのある快適な労働環境等の改善指導を現場指導も含めて実施している。

鈴木氏は、農業法人等の労務管理を多数手がけるほか、行政機関等からの依頼により、農業経営者向けの労務講座を地元静岡県の他、全国各地で精力的に行ってきた。
また、農業者と共に女性活躍や障害者雇用の支援にも取り組むなどその活動は多岐に渡っている。

少子高齢化が進み働き手が少なくなる昨今、農業経営体には、働き方改革による魅力ある職場づくりが求められている。働き方を見直し、若い人も働きやすい環境を作るため、作業を省力化する最先端の技術の導入、近代的な労務管理の考え方の導入などを積極的に推進してきた。

働く人のキャリア形成・能力開発にも積極的に取り組み、優秀な人材確保や女性目線による業務プロセスの改革提示を行い、顕著な成果を上げてきた。

多様な人材が働く現代の農業経営の現場では、安全衛生教育や作業機械の安全確認、暫定任意事業における労災保険の適用推進など労災事故防止について、社会保険労務士事務所開業後、鈴木氏は積極的に取り組んできた。
 
 

第3回日本農業労災学会賞の表彰

会員から推薦された学会賞候補者に対し、学会賞等選考委員会の慎重な審議と理事会の承認を経て以下のように、本学会で第3回学会賞受賞者が決定しました。

今回は本学会設立10周年の節目として、学会に貢献のあった方に特別賞を授与することとなりました。
おめでとうございます。

2023年10月20日(金)にハイブリッド開催された第3回表彰式において、受賞者に学会賞・特別賞が授与され、受賞者からスピーチをいただきました。

●実践賞(団体の部)
鹿児島県農業協同組合中央会(代表理事会長 山野 徹)

【授賞理由】 JA鹿児島県中央会(以下、中央会)は、農家組合員からの「農作業事故による経営へのダメージを軽減するためJAの支援があれば労災保険特別加入制度に加入したい」という要望を受け、2010年に中央会内に、「鹿児島県農協労働保険事務組合」「鹿児島県農協労災保険加入組合(特定農作業)」を設置し、県内JA全域を加入対象にした。

2012年3月に「鹿児島県農協労災保険加入組合(指定農業機械)」を社会保険労務士の指導を受けて設立して労働安全対策活動を組織的に展開した。

個別JAは受付・申請などの業務と啓発活動・個別巡回指導を、中央会は事務組合の運営、県庁や社労士との連携、全体研修会の開催による啓発活動を実践する、というように役割分担を明確にして相互に連携して推進する体制を構築して活動を展開した。

2022年度には中央会営農サポートセンターに事務組合専任担当職員1名(社労士)、推進職員1名、保険料の納付手続き等補助職員1名、JA支援担当職員6名を置いて、全県挙げての活動体制を整備した。

県内13JAのうち農業労災事務担当者11JA:11名を置くとともに、組合員相談担当者を13JA:28名、営農指導員13JA:291名がそれぞれの立場で労働安全活動を展開している。

以上の中央会と単位JA が一体となった取り組みで、2010年度に20事業所、<加入者115名>で始まった取り組みが、2015年度は172事業所、<加入者922名>、2022年度には421事業所、<加入者1,741名>まで加入者拡大の成果を上げている。

その結果、2011年から2020年の農作業死亡事故件数は、19件から10件<47%減少>と全国を上回る成果を上げていている。

以上のように、JA鹿児島県中央会の農業労働安全活動は、単位JAの参加、社労士を巻き込んでの組織的な取り組みを行い、着実な成果を実現している。都道府県のJAの取り組みの模範となるものであり、その活動の普及性は高い。
 
 
●特別賞(功労賞)
入来院 重宏(キリン社会保険労務士事務所 所長)

【授賞理由】 入来院重宏氏は、日本農業労災学会設立に際し発起人として尽力され、2014年4月の学会設立から2018年3月まで4年間にわたり学会副会長として学会運営に精力的に関わられた。

また、学会設立に際して、自らの事務所であるキリン社会保険労務士事務所内に学会活動の要である学会事務局を置くことを了承され、それ以降現在まで10年間にわたり、日々学会運営を支えていただいている。

この学会事務局体制の継続がなければ本学会活動は円滑に遂行できなかったと考える。

入来院氏は、2010年8月4日に全国の25都府県55人の社労士により、農業法人等における雇用の改善を進め、農業経営の健全な発展と従業員の働く意欲の向上に努めることを目的に全国農業経営支援社会保険労務士ネットワーク(社労士ネット)を立ち上げ、初代会長に就任して、その活動をリードされてきた。

その過程で、①雇用改善の普及啓発、②農業法人などへの雇用・労務管理の改善に向けた相談、③労働保険、社会保険への加入促進、④会員間の情報共有と意見交換、について、都道府県農業会議と連携した活動を展開してきている。

こうした社労士としての精力的な組織活動がベースとなり、本学会の基幹的な会員である社労士会員の農作業事故防止・労災補償対策に係わる関係機関と連携した地域活動を促し、農作業事故の撲滅、死亡事故ゼロを目指す本学会の目標達成のため大きく貢献されてきている。
 
 

第2回日本農業労災学会賞の表彰

会員から推薦された学会賞候補者に対し、学会賞等選考委員会の慎重な審議と理事会の承認を経て以下のように、本学会で第2回目の学会賞受賞者が決定しました。
おめでとうございます。

2022年10月21日(金)にハイブリッドで開催された第2回学会賞表彰式において、受賞者に学会賞が授与され、受賞者からショートスピーチをいただきました。
●実践賞(個人の部)
中村 雅和様 (いのしし社会保険労務士事務所 所長・社会保険労務士)
 
実践活動 中村氏は、社会保険労務士として農業者が労災保険に加入して安心して仕事に取り組めるようにすべく、自ら2010年に労災保険特別加入団体「農業労災事務センター」(特定農業機械作業従事者団体)を設立し、翌2011年には特定農作業従事者団体を設立し、加入促進、事故対応を推進している。
その成果は顕著で、福岡県内で21団体(20JA)、723名の会員を有する組織まで成長させ、農業労災保険加入を大きく促進した。

この取り組みに対する注目度は高く、中村氏は日本全国で啓蒙活動を行い農業従事者の安全確保に大きく貢献している。
 
 
●実践賞(団体の部)
秦野市農業協同組合 (代表理事組合長 宮永 均様)
 
実践活動 JAはだのは、1978年に「農業労働災害対策委員会規程」を定め、農作業安全対策活動と農業労働災害保険加入促進運動を両輪として45年間一貫して農業労働安全対策に取り組んできた。
この取り組みは、秦野市・秦野市農業委員会・JAはだのの三者で構成するネットワーク組織「はだの都市農業支援センター」が中心となって組織的な取り組みとして大きな成果を上げてきた。
その成果は顕著で、「特定農作業従事者」と「特定農業機械作業従事者」の特別加入に2021年現在974人(正組合員対比で34%、神奈川県下JAの加入平均は6.6%)が加入して労働安全に取り組み、実績を上げている。
 



第1回日本農業労災学会賞の表彰

会員から推薦された学会賞候補者に対し、学会賞等選考委員会の慎重な審議と理事会の承認を経て以下のように、本学会で最初の学会賞受賞者が決定しました。
おめでとうございます。

2021年10月22日(金)にZoomで開催された第1回学会賞表彰式において、受賞者に学会賞が授与され、受賞者からショートスピーチをいただきました。
●学術賞(共同研究学術賞)
研究代表 門間 敏幸様 (東京農業大学名誉教授)
  半杭 真一様 (東京農業大学准教授)
  兼高 秀樹様 (大分県農業協同組合中央会)
  小原 稔様 (福島県農業協同組合中央会)
  北田紀久雄様 (東京農業大学元教授)
 
研究業績 「JAグループにおけるGAP推進による農業者所得拡大と労働安全確保を結合したビジネスモデルとその戦略的実践システムの開発」
(『協同組合奨励研究報告 第四十六輯』JA全中編)
 
 
●実践賞(個人の部)
田島 淳様 (東京農業大学教授)
 
研究業績 ILO『Ergonomic checkpoints in agriculture (Second edition)』日本語版『農業における人間工学的チェックポイント―農業における安全改善、健康改善、労働環境改善のための実践的・実行しやすい解決法―』の翻訳
 
 
●実践賞(団体の部)
広島県農業協同組合中央会 (代表理事会長 忠末 宣伸様)
社会保険労務士法人たんぽぽ会 (代表社員 木山 恭子様)
 
実践活動 広島県農業協同組合中央会と社会保険労務士法人たんぽぽ会とで業務提携を締結し、農業労災加入窓口の一本化、広島県下の農作業安全対策・労災補償に対する連携した取り組み